全日本建築士会

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第6回日越伝統木造建築交流会議

世界遺産に登録されているベトナム中部の古都フエに点在する伝統木造建築群についてベトナム政府系機関であるフエ遺跡保存センターからの要請を受けて修復・保存に技術面で協力している本会が、同センターと共催で2017年11月1日に現地で6回目となる「日越伝統木造建築交流会議」(準備会議)を開きました。今回は全日本建築士会の会員など5名とフエ遺跡保存センターの関係者10名以上の関係者の参加により、今後の具体的な協力関係を話し合うための予備会議を成功裏に終えることができました。

日越伝統木造建築交流会議の経緯


会議  19~20世紀に存在したベトナム最後の王朝、阮(グエン)朝の首都として栄えた古都・フエ。市内中央を流れるフォーン川北岸に広がる旧市街地に点在する旧王宮や寺院、博物館、皇帝廟などの木造建築群は「フエの建造物群」として1993年に同国初の世界遺産に登録されました。高温多湿の気候のため、木材の腐食が激しい上、戦争によって損傷を受けた建築物もあり、これらを後世に伝えていくために修復・保存が急務になっています。
世界遺産としての基準を満たしたまま修復作業を進めるには、木造建築に関する技術の継承と、それに精通した人材の確保・育成が大きな課題です。
 こうしたベトナム側の窮状を受けて、建造物群の修復・保存に協力するため、フエで宮殿のシンボルとして現存する午門や太和殿の修復・保存に長く携わってきた中川武早稲田大学名誉教授の協力を受け、2012年に当会と宮殿などの歴史的建築物群を管理するベトナムの公的機関・フエ遺跡保存センターとの間で日越伝統木造建築交流会議が発足しました。以来、2017年の秋で6年目を迎え、技術協力・人材育成などの環境整備に協力を進め、2014年10月の第三回日越伝統木造建築交流会議ではユネスコ・イコモス委員を迎え、フエ王宮内の劇場・閲是堂においてユネスコ・イコモスの委員会開催に向けた発表・討論が行われ、また、2016年9月には、日本とベトナム以外にドイツ、フランス、韓国からもフエ遺跡保存等についての専門家が招かれ、保存活動について各国からの論文発表や討論が行われた、参加人数は過去最多となる約100人に上る国際シンポジウムが開催されました。

第六回日越伝統木造建築交流会議(準備会議)


 会議  フエの木造建築群を構成する建物の大半は、日本と同様に高温多湿の気候によって木材の劣化が激しく、シロアリによる腐食も目立ち、インドシナ戦争やベトナム戦争によって壊滅的な被害や大きな損傷を受けた建物も少なくありません。
 世界遺産地区内の歴史的伝統木造建築群を保存管理するフエ遺跡保存センターのファン・タン・ハイ所長は、ベトナムの歴史の象徴ともいえるフエの木造建築群を後世に継承する修復・保存をベトナムの歴史的大プロジェクトに位置付けており、修復作業は現在までに2~3割程度の進捗にとどまっているが、今後おおむね50年間でほぼ完了させる計画としています。フエ遺跡保存センターの関係者は「そのためには、同じアジアで木造建築の歴史と伝統を持つ日本からの更なる技術協力が不可欠だ」と強調しています。
 今回の会議では、本会とフエ遺跡保存センターとの間の今後の具体的な持続的な情報交換、協力関係を協議するための予備会議として、①木材のシロアリの被害状況及び被害防止対策、②木材の腐朽の被害状況及び腐朽防止対策、腐朽部分の補強方法、③伝統木造建築の継ぎ手の構造比較研究等についての日本-ベトナム間での情報交換、技術協力について、及び、以上のような諸点をも一起点とした東南アジア伝統木造建築保存センター設立を視野に置いた活発な意見交換が行われました。
 また、今井正敏理事は、日越伝統木造建築交流会議の技術協力の一環として、フエの貴族住宅の一つである延福長公主祠の修復の技術指導を行ってきましたが、その一環として今回の会議では1/40の延福長公主祠の模型が作成され、その有効活用方法として、ベトナム伝統木造建築の修復・保存の重要性の周知に資するため、フエの旧王宮内に展示されることとなりました。
本会としては、フエにおける技術協力、情報交換を積極的に進めて行くにあたり、今後の会議で世界的な理解を得るとともに、将来的には日本国内でも他の木造建築関連団体と連携しながら国内外での協力の輪を広げ、修復・保存活動のより一層の推進につなげて行く考えです。
 第六回日越伝統木造建築交流会議(準備会議)には本会からは、中村光彦専務理事、今井正敏理事、一糸左近理事、加藤博之本会企画業務課長が参加しましたが、会議開催にご尽力いただいたフエ遺跡保存センター長ファン・タン・ハイ氏や中川武早稲田大学名誉教授をはじめ、関係団体・関係者、会員及び会議参加の皆さまに謝意を表します。

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