一級建築士 試験

令和元年一級建築士設計製図試験課題の総評

- 2019年10月16日 -

本年度の課題: 「美術館の分館」


要求図書
●1階平面図、配置図(縮尺1/200)
●2階平面図(縮尺各1/200)
●3階平面図(縮尺各1/200)
●断面図(縮尺1/200)
●面積表
●計画の要点等
(注1)既存の美術館(本館)の隣地に、美術、工芸等の教育・普及活動として、市民の創作活動の支援や展示等を行うための「分館」を計画する。
(注2)屋上庭園のある建築物の計画
(注3)建築基準法令に適合した建築物の計画(建蔽率、容積率、高さの制限、延焼のおそれのある部分、防火区画、避難施設 等)



1、課題の特徴
本年の課題では、以下のような点が特に注目すべき留意点として挙げることができます。
(1)課題条件の形式について
 問題用紙は本年も昨年と同様のA2用紙による出題で、課題条件の最後の計画の要点等までで従来のA3サイズを超える長文の課題でしたが、課題条件の長文化はそれだけ条件がきめ細かく示され、実際の設計に近づいたことにもなります。また、事前に公表されていた「建築物の計画に当たっての留意事項」は、試験室の黒板に掲示されました。

(2)敷地の条件について
 敷地の形状は、南北方向の縦長敷地で、かつ、敷地に接する道路は敷地短辺の北側に接する道路のみであることから、利用者のメインアプローチ、管理用のサブアプローチ等の全てのアクセスを敷地短辺の北側にとらねばならず、また建物の平面計画においても、利用者ゾーンと管理ゾーンを短辺の間口の狭い中で計画しなければならないため、アプローチの計画上、建築計画上ともにやや難しい条件となっているといえます。

 なお、敷地の東側には既存の美術館(本地)が立地することから美術館との関係が計画上の重要な要件となり、また、敷地の西側と南側には良好な景観の望める公園が面していることから、これらの条件に対する景観上の配慮も計画上、不可欠な留意点となっています。
更に、敷地面積が32m×48mと比較的狭く、建蔽率が60%であることから建築面積の上限が小さくなっていることも計画上の難度を高くしています。

(3)要求室等の条件について
 要求室の条件として、面積(約○㎡として要求するもの、○㎡以上として要求するもの)、動線(室と室との連なりを示すもの)、室形状(天井高、短辺/長辺比、無柱空間等)など、従来以上にきめ細かく様々な条件が付されたのも本年の課題の特徴で、この傾向は今後も継続することが予想されます。
 なお、要求室として、美術品収蔵庫、燻蒸室、修復作業室は必要ないと念のため明記されている点については、この建物がいわゆる美術館ではないことからも当然のことといえます。
 また、3層の吹抜けによる自然採光、空調負荷の抑制や水平、垂直ルーバーによる日射遮蔽等、近年の課題で要求されているパッシブデザインも、予め要求事項として明記されていなかったのにもかかわらず、本年度の課題において計画上の条件となっていた点も重要な留意点といえます。
 なお、本年度課題の条件の特徴として屋上庭園の設置が挙げられますが、樹高3m以上の樹木を植栽するための500mmの客土を100㎡以上設けることが明示されていた点は従来にない新規な条件として注目されます。

(4)計画の要点記述について
 従来、要点記述においては、補足図は必要に応じて説明のために記入してもよいとされており、補足図の記入はいわば任意であったものが、本年の要点記述においては、必ず記入することという必須条件に変わったことも大きな変化で、今後も継続が予想される傾向として注目されます。
 以上のように本年度の試験の課題においては、昨年に引き続き、単独の敷地における単独の建物としての計画ではなく、関連する施設の相互の関係をも計画の条件とするものであった点、敷地条件そのものが敷地の形状や接道条件等、計画上やや難度の高い条件であったことに加え、要求諸室についても従来以上にきめ細かい条件が付されるなど、総合的に課題条件としてやや難度が高く、高度であったということができます。なお、総体的に難度の高くなった以上のような傾向は大方、今後も概ね引き継がれる可能性が高いと考えることができます。
 
 その一方で、あくまでもしっかりした建築計画力が身についていれば確実に対応できる課題であるという点については変わりなく、今後とも着実な建築計画力の養成が合格の鍵となる点については変わりないといえます。


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