二級建築士 試験

2019年二級建築士設計製図試験課題の総評

- 2019年9月19日 -

本年度の課題: 「夫婦で営む建築設計事務所を併設した住宅(木造2階建て)」


要求図書については、1階平面図兼配置図[縮尺1/100]、2階平面図[縮尺1/100]、2階床伏図[縮尺1/100]、立面図[縮尺1/100]、断面図[縮尺1/100]、面積表、計画の要点等、
(注)答案用紙には、1目盛が4.55ミリメートル(部分詳細図(断面)については10ミリメートル)の方眼が与えられている。

●本年度試験課題の傾向

二級建築士設計製図試験は、平成24年に試験内容の見直しが公表されて以来、例えば一部の室面積については、受験者自身が特記事項から考えて設定するなど、受験者自身の裁量の余地の大きい、自由度の高い、設計者の能力としての提案力をも評価するものに変化してきておりましたが、本年度の課題はこの傾向が一段と濃厚なものとなりました。



●本年度試験課題における計画上の問題点
・敷地について
まず、課題の敷地は、南面道路に接するほぼ正方形の敷地で、試験の課題の敷地としてはごく一般的なものであるといえますが、敷地の南側道路境界から5.5Mの範囲は建築物を建ててはならない部分とされていることと、敷地の西南端部に既存樹木があることが計画上の制約条件となっているのが、この課題の敷地の特徴といえます。
上記の敷地の道路境界から南側5.5Mの範囲では建築物を建ててはならないという制約条件は、住宅は敷地の北側に寄せ、できるだけ南側はあける本来の計画上の定石によれば特に問題となることはなく、また、この課題では配置計画上、異種の建築物である建築設計事務所と住宅部分のアプローチ及び駐車・駐輪場をどのように区分するかが重要なポイントとなりますが、事務所と住宅のアプローチやそれぞれの駐車・駐輪場をできるだけ東西にあけて区分するという計画上の定石により、更に保存樹木を計画上活用することについても、敷地の西南端部の保存樹木は事務所または住宅のいずれかのアプローチ部分の環境を向上させるものとして活用することにより、配置計画上の特に大きな制約となるものでなかったといえます。

・建築計画について
本課題の建築計画上の条件として、まず住宅部分は夫婦に子供2人の一般的な家族構成で、また、事務所部分についても一般的な建築事務所の内容といえますが、他方、建築事務所については、車イス利用者の来訪を想定することとなっているのが留意点となっており、更に、「夫婦で営む建築設計事務所」として、夫婦が働きながら家事をしやすい、家事・育児と設計業務の両立が建築計画上の必要条件となっている点が重要な留意点となっています。

・自由度の高い条件の課題について
本年度の課題では、試験内容が先年見直されて以降、前述のように自由度の高い条件の設定が近年の注目すべき傾向となっている中にあって、保存樹木の活用や家事・育児と設計業務の両立等の課題条件は計画上、一段と受験者がきめ細かく対応し、提案することを要する自由度の高いものとなっていると考えることができます。
以上の傾向に対応するためには、一段と高度な建築計画力を養成することが必要で、重要な合否の鍵となると考えられます。

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