一級建士試験築

令和 7年一級建築士設計製図試験課題の講評

   -本課題の本質的な意味と対策-
- 令和 7年7月28日 -

【課題の講評 
本年度の一級建築士設計製図試験の課題は以下のように発表されました。

   課題:「 庁 舎 」


■要求図面

■建築物の計画に当たっての留意事項

■注意事項



課題の解説

本課題の本質的な意味

令和7年一級建築士設計製図試験の課題は、上記のように「庁舎」と発表されましたが、課題の「庁舎」には、やや違和感を持った方もおられるのではないでしょうか。

その場合、その違和感とは、課題の内容が漠然としていて捕らえどころのないような印象を与えるもので、その違和感は、全く同様に昨年の課題の「大学」にも通じるものであり、実は近年の多くの課題に顕著に見られる傾向であるとも考えることができます。

すなわち、従前は例えば「緑豊かな吹抜け空間のある地域図書館」と出題されたものが近年は単に「図書館」と出題されたり、従前は「高齢者施設を併設した集合住宅」と出題されたものが近年は単に「集合住宅」と出題されたりするように、従前は課題の内容を具体的に示す付記がされていたものが、近年の課題では課題の内容を示す付記がないために、課題の内容が広く、捕らえどころのないもののように見えることになっていると考えられます。

この傾向は、本年の課題についても、平成2年には「地方公共団体の庁舎」と出題されたものが、本年の課題では単に「庁舎」と出題されていることにも見ることができます。

以上の近年の課題の多くのものに見られる課題の内容を具体的に示す付記がないということは、課題としては一見単純化されたもののように見えても、課題に付記のない分だけ課題としての出題の内容の範囲が限定されることなく、非常に捕らえどころのないように広くなるわけで、以上のことは昨年の課題の「大学」にも全く同様に見ることができます。

昨年の課題のように単に「大学」というだけでは、大学に含まれる実に様々な大学の施設の一体どの施設が試験の課題として出題されるか全く見当もつかないくらいで、従来のように課題の付記を手がかりに本試験の出題の内容を予想することが非常に難しくなってきていると言えるわけで、昨年の試験の課題では、駅前広場に隣接する大学のサテライト施設という、単に「大学」という課題名だけからは予想しがたい内容のものが、本試験課題として出題されました。

(本会の講座では、演習課題に本試験課題と同様の大学の駅前サテライト施設が含まれていましたが、本会講座では、時には演習課題が本試験課題と似た内容のものとなることもありますが、後述のように本会講座は本試験課題のヤマを予想することを主眼としているものではありません。)

本課題への対策

以上のように、本課題は、「庁舎」という極めて漠然としたものであるが故に、付記による課題の内容の範囲に制約のない様々な要素からなる広範囲な内容の課題となり得るもので、それらをいくつかのパターンとして覚えておくことを主眼としたような従来の勉強法では対応が困難な課題であるということができ、以上のような傾向の課題については、様々な多種多様な課題条件に着実に対応できるような基本的な建築計画力をしっかり身に付けておくことが極めて重要であるといえます。

設計製図試験の計画上の基本事項として、まず建築法規に係わる規定等をしっかり理解することや省エネ設計に係わる基本事項等をしっかり理解しておくことが重要であることは申すまでもありませんが、上記のような傾向の課題については、様々な課題条件に着実に対応できるような基本的な建築計画力をしっかり身に付けておくことが極めて重要であると言え、実はこのことが本来の設計製図試験の目的であるとも考えられます。

建築計画において重要なポイントとなるゾーニングや動線についての考え方は、課題条件によって実に多種多様な場合があるわけですが、その一方でそれらの根底となる考え方には、基本的にはいくつかの共通する考え方があるわけで、系統的に準備された演習課題により、それらの共通する基本的な考え方を着実に身に付けていくことにより、多種多様な内容の課題にも適切に対応することのできる建築計画力を身に付けることが可能となります。

上記のような課題の本質的な意味を理解し、それに沿った適切な対策を進めることが最も効果的な合格の鍵となると考えられます。

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