二級建築士設計製図試験

―設計製図試験の近年の注目すべき傾向―

 二級建築士設計製図試験の内容は、近年、徐々に高度なものになってくる傾向がありましたが、特に平成24年度以降の試験の見直しが行われて以来、その傾向が顕著になってきたと考えることができます。 まず、以下に試験の実施機関である(公財)建築技術教育普及センターより平成24年に公表された試験の見直し内容について改めて見てみることとします。

 「二級建築士設計製図試験についての平成24年度試験以降の見直し内容」
建築物の設計全般に関する基本的な知識・能力等を確認するために、従来の設計課題における要求内容を概ね維持したうえで、例えば、ポイントとなる主要室等の床面積、計画等について設計の自由度を高めた条件設定(床面積等の条件を「適宜」とする等)とする。
主要な室等の計画の要点(工夫した事項や設計意図)等について記述する内容を付加した出題とする。要求図書の矩形図については、設計課題に応じて、切断位置の指定について変化をもたせたり、矩形図に代えて断面図を要求したりする。

 これらの見直しに当たっては、受験者に過度の負担を強いることのないようにする観点から、できるだけシンプルな建築物又は一般的な建築物の設計課題とする。
上記の見直しに伴い、試験時間については、従来の4時間30分を30分延長して、5時間とする。

 上記の見直し内容の中で、まず最も注目されるのは「ポイントとなる主要室等の床面積、計画等について設計の自由度を高めた条件設定(床面積等の条件を「適宜」とする等)とする。」とされている点で、従前の全ての要求室については、それらの床面積も併せて示されていたのに対して、大方の要求室の床面積は受験者自身の判断により設定しなければならなくなったことです。

 これにより、従前にも増して試験課題の内容についての確実な知識が要求されるとともに、課題条件についての適格な総合的判断力が必要とされるようになったと考えることができます。

 また、上記の見直し内容の中で「ポイントとなる主要室等の床面積、計画等について・・・・」と床面積と併せて計画等と記されている点にも注意する必要があります。

 ちなみに従前からも、計画についての課題条件について自由度がやや高いものとなってくる傾向が見られていましたが、この試験の見直し内容の中でも明記されていることは、特に注目すべき点であるといえます。

 計画についての自由度の高い課題条件とは、例えば敷地に二つの道路が接しているとした場合、通常は二つの道路の幅員が異なるとして出題される場合が多いため、幅員の広い道路の方からを敷地へのメインアクセスと考え、幅員の狭い道路の方からを敷地へのサブアクセスと考えればよい訳ですが、仮に二つの道路の幅員が同じである場合は、どちらの道路の方からをメインアクセスと考え、サブアクセスと考えるかは、受験者自身が判断しなければならないこととなり、それが建築計画に大きく影響する場合もあります。

 これは、受験者自身が判断しなければならない余地、すなわち自由度が高くなった課題条件であるといえ、それだけ高度な計画力を要する高度な課題であるといえます。

 以上のような自由度の高い課題が出題されるようになってきた傾向が近年みられるようになってきましたが、24年度の試験の見直し以来、その傾向が徐々に顕著になってきているといえます。

 次に試験内容の見直し点として注目されるのが、計画の要点を記述することが記された点です。
これは、受験者が計画した内容に対して、いかに適格にその要点が記述されているか、計画された内容と記述された内容が適格に整合しているか、これも建築計画力の評価の一環と考えることもできます。

 以上のように設計製図の試験では、建築計画力を評価する課題内容が徐々に高度なものとなってきて、その比重も大きくなってきていることが、特に近年の試験の傾向として注目される点であるといえます。

 建築計画力は試験の合否に最も重要な影響を与える合否の鍵となるものといえますが、建築計画力を養成することは中々、短期間では難しいこと、また、建築計画力を養成する勉強のために課題の対象の建築物が何であるかは直接関係しないことも理解しておく必要があります。

 以上から、設計製図試験での合格を確実なものとするためには、できるだけ課題発表前の早い時期から適格な課題演習により、建築計画力の養成を図ることが重要なステップであるといえます。


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