合格への鍵 ~重要必須事項について、近年の問題を通して解説~
(本欄は、当会の建築士講座講師が適宜分担して執筆し、当会建築士講座監修者が総合監修します。)第 7 回
【問題1】「建築物の耐震改修の促進に関する法律」に関する次の記述のうち、 誤っているものはどれか。この問題は、平成24年一級建築士法規の問題で、設問1、2、3は正しく、設問4は誤りですが、この問題には耐震改修促進法についての、法の不遡及の原則、既存不適格建築物に係わる重要な事項が含まれています。
- 所管行政庁は、耐震改修の計画の申請に係る建築物が耐震関係規定に適合せず、かつ、建築基準法第3条第2項の規定の適用を受けている防火地域内の階数が3の耐火建築物である場合において、柱およびはりの模様替をすることにより、当該建築物が建築基準法第61条の規定に適合しないこととなるものであっても、所定の基準に適合すると認めるときは、計画の認定をすることができる。
- 所管行政庁は、耐震改修の計画の申請に係る建築物が耐震関係規定及び耐震関係規定以外の建築基準法の規定に適合せず、かつ、同法第3条第2項の規定の適用を受けている場合において、当該建築物の壁のない部分に壁を設けることにより、建築物の延べ面積を増加させる増築をしようとするものであり、かつ、当該工事後も、引き続き、耐震関係規定以外の同法の規定に適合しないこととなるものであっても、所定の基準に適合すると認めるときは、計画の認定をすることができる。
- 所管行政庁は、床面積の合計が2,000㎡のホテルについて、必要な耐震診断又は耐震改修が行われていないと認めるときは、その所有者に対し、必要な指示をすることができる。
- 一定規模以上の特定既存耐震不適格建築物の所有者は、当該建築物について耐震改修の計画を作成し、所管行政庁の認可を受けなければならない。
【問題2】次の記述のうち、「建築物の耐震改修の促進に関する法律」上、誤っているものはどれか。この問題は、平成28年二級建築士法規の問題です。設問1、2、3、4は正しく、設問5は、「所管行政庁」とあるのは耐震改修促進法第10条第1項により「都道府県」なので、比較的単純な手続きに関する設問で誤りですが、この問題にも本来は法の不遡及の原則から耐震改修促進法の基本は努力義務規定で義務規定でないところを、設問1のようにできるだけ耐震改修の促進を図るための制度に関する設問や、また、設問3における要安全確認計画記載建築物や設問4における通行障害建築物のような災害時に甚大な被害の発生の可能性の高い建築物については、できるだけ耐震改修の促進を強く図ろうとする規定(耐震改修は努力義務でも耐震診断は義務化とする)に関する設問が含まれています。
- 建築物について地震に対する安全性に係る基準に適合している旨の認定を所管行政庁から受けた者は、当該建築物(基準適合認定建築物)、その敷地又は広告等に、所定の様式により、当該建築物が認定を受けている旨の表示を付することができる。
- 建築物の耐震改修の計画の認定を受けた者が、当該計画の認定を受けた計画に係る耐震改修の事業の完了の予定年月日を3月延長しようとするときは、所管行政庁の変更の認定を受けなくてよい。
- 要安全確認計画記載建築物の所有者は、当該建築物について、国土交通省令で定めるところにより、耐震診断を行い、その結果を、所定の期限までに所管行政庁に報告しなければならない。
- 通行障害建築物は、地震によって倒壊した場合においてその敷地に接する道路の通行を妨げ、多数の者の円滑な避難を困難とするおそれのあるものとして政令で定める建築物である。
- 所管行政庁は、通行障害既存耐震不適格建築物の所有者から申請があったときは、国土交通省令で定めるところにより、耐震診断の実施に要する費用を負担しなければならない。