合格への鍵 ~重要必須事項について、近年の問題を通して解説~

(本欄は、当会の建築士講座講師が適宜分担して担当し、当会建築士講座監修者(元国土交通省室長)が総合監修します。)

(2019年度)2019年1月25日 ―定番となりつつある高齢者福祉施設に関する問題―


 少子高齢化の問題が今日的な最重要課題となっていることは申すまでもありませんが、建築士試験の問題としても近年は、特に高齢者への建築的な対応、高齢者福祉施設等の問題は新傾向の問題から出題頻度の極めて高い定番の問題ともなりつつあります。

【問題1】高齢者のための施設や住まいに関する用語とその説明との組合せとして、最も不適当なものはどれか。
1 老人デイサービスセンター 身体上又は精神上の障がいにより、日常生活を営むのに支障がある高齢者等(養護者を含む。)に対し、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練、介護方法の指導、生活等に関する相談及び助言、健康状態の確認等のサービスを、通所方式で提供する施設
2 有料老人ホーム 医療ケアを必要とする要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とし、入所者がその有する能力に応じ、自立した日常生活を営むことができるようにするとともに、居宅における生活への復帰を目指した施設
3 ユニットケア 入居者10人前後の日常生活の領域を一つのユニットとして位置づけ、各ユニットに個室と他の入居者や介護スタッフと交流するための居間(共同生活室)があり、他の入居者や介護スタッフと共同生活をしながら、入居者の個性や生活リズムに応じて暮らしていけるようにサポートしていく介護手法
4 ハウスアダプテーション 既存住宅において、そこで暮らす高齢者等の身体状況に応じて、開口部や通路の有効幅員、段差等の日常生活上の障がいを除去することによって、高齢者等がなるべく在宅のまま住み続けられることを目的とした住宅改造
 この問題は、平成27年の一級建築士計画の用語に対する説明の適否を問う問題です。
設問1,3,4は用語に対する説明としていずれも正解ですが、設問2は、医療ケアを必要とする要介護者に対して看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とし、入所者の能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにするとともに、居宅における生活への復帰を目指す施設は、介護老人保健施設ですので誤りです。
 なお、有料老人ホームは、高齢者を入居させ食事の提供や介護などの提供をする事業を行う施設で、老人福祉施設(老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、老人福祉センター、老人介護支援センター)や認知症対応型老人共同生活援助事業を行う住居などを除くものをいいます。 また、設問3のユニットケアは、特別養護老人ホームなどが多人数を効率的に介護する傾向を有するのに対して、少人数の各入居者ごとの個性や生活を尊重して介護を行う施設で、設問4のハウスアダプテーションは、高齢者・障がい者の生活の充実・向上のために、医療・福祉関係者と連携して住宅改造を行うことをいいます。

【問題2】社会福祉施設等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
  1. ケアハウスは、家族による援助を受けることが困難な高齢者が、日常生活上必要なサービスを受けながら自立的な生活をする施設である。
  2. 介護老人保健施設は、病院における入院治療の必要はないが、家庭に復帰するための機能訓練や看護・介護が必要な高齢者のための施設である。
  3. 認知症高齢者グループホームは、介護を必要とする認知症の高齢者が、入浴や食事等の介護を受けながら共同生活を行う施設である。
  4. 老人デイサービスセンターは、在宅介護を受けている高齢者が、送迎等により通所して、入浴や日常動作訓練、生活指導等のサービスを受ける施設である。
  5. 特別養護老人ホームは、常時介護の必要はないが、自宅において介護を受けられない高齢者のための施設である。
 この問題は、平成22年二級建築士計画の問題です。 この問題の設問1,2,3,4は正で、設問5の特別養護老人ホームは、常時介護が必要(・・)で在宅介護を受けることが困難な65歳以上の高齢者が、入浴や食事等の介護、医師による健康管理や療養上の指導等を受ける施設であるため、誤りです。

 問題1も問題2もほとんど同様の施設についての正誤を問う設問からなる問題ですが、いずれも高齢者施設についてのしっかりした正確な理解と知識が必要で、単なる表面的な記憶で対応するのは難しい問題であるといえます。 なお、少子化に対する課題は、現在までのところ一級、二級建築士学科試験の問題としてとりあげられた例はそれほど多くはありませんが、平成28年一級建築士設計製図試験の課題として「子ども・子育て支援センター(保育所、児童館・子育て支援施設)」が取り上げられるなど、今後は、高齢者福祉施設等と同様に子育て支援施設等に関する問題も多く取り上げられるようになる可能性は高いと考えられます。


※過去の出展(過去10回分を表示)
第16回解説 2019年 1月 7日 ―耐震改修に関する施工の問題―
第15回解説 2018年11月 15日 ―新傾向問題としての改修工事―
第14回解説 2018年10月 1日 ―リノベーションからコンバージョンへ―
第13回解説 2018年 8月 11日 ストックの時代に対応するリノベーションに関する問題―
第12回解説 2018年 6月 28日 建築協定における一人協定とは何か?
第11回解説 2018年 5月 31日 建築基準法における一石三鳥の誘導的基準
第10回解説 2018年 4月 12日 建築基準法第27条の歴史的な改正
第9回解説 2018年 2月 28日 建築基準法における仕様規定と性能規定
第8回解説 2018年 1月 29日 バリアフリー法における義務化と努力義務化規定
第7回解説 2017年 12月 28日 法の不遡及の原則とは何か?
第6回解説 2017年 11月 29日 他の建築士の作成した設計図書を許可なく変更することは可能か?

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